フェアトレードの話2

<クズハ>

カルカッタの話その2です。

マザーテレサの修道院には

マザーを慕って世界中からボランティアが集まっていました。

常時数十人はいました。

朝もやの中を修道院(マザーハウスと呼ばれています)に向かい

朝のお祈りに参加。

パンだけですが朝食が出て、

そのあとはあちこちの施設に奉仕に参加。

親のない子どもの施設、障害のある子どもの施設、

ハンセン氏病の人たちの「コロニー」

そして「死を待つ人の家」

路上で行き倒れるほど貧しい人たちに、

せめて最後のときくらいは、

人間らしく 誰かに看取られていってほしいという願いで作られた施設です。

名前で、かなりビビるでしょう?

私もそうでした。

でもここが人手が足りないというので恐る恐る行きました。

カルカッタでは貧しい人が路上で生きたままネズミにかじられていることもあるんだよと聞かされていたので、そんな人生の最後を こんな私が受け止められるのか大いに疑問でしたがとにかく行きました。

施設までは、先輩ボランティアについて行きましたが

現場では皆ものすごく忙しいので

仕事は見よう見まねでやるしかありません。

建物の中にずらっとベットが並んでいて、その日はシーツを交換する日だったようで、私も片っ端からシーツをはがして洗い場に運びました。みんなそうやっているように見えたので真似したんですけど、

イメージでは、もう虫の息のおばあちゃんたちが 時には涙を流して「ありがとう、お世話してくれて」と言葉が通じないなりに手をにぎったり・・・という場面を想定していたのですが、現実には、シーツをはがすとギャアギャア怒るおばあちゃんやら、指差してベンガル語で怒鳴ってくるおじいちゃんやら、何がなんだか怒られてばっかり。

ちょっと貸しなさいよ!その汚いシーツ!洗うっていってるでしょうが!と、こちらも汗だく。

ひとしきりシーツを大きなお風呂のような洗い場に突っ込んで洗濯した後で、さあ新しいシーツを配る時間になってようやく、何を怒られていたのかわかりました。

そのころは雨季で、すごい湿気のカルカッタではシーツもなかなか乾かないので、シーツの数が足りておらず、おばあちゃんたちは貴重なシーツを持っていかれまいと必死だったのです。すこしくらいの汚れはガマンしてもシーツを確保したくて頑張っていたのに、新米の私はみんな剥ぎ取って水桶に突っ込んでしまったらしい。

言葉通じないとねえ。

冷たいビニールの裸ベットの上で恨めしそうにこっちをみているご老人たちから逃れるようにしてその日は帰りました・・・。

「死を待つ人の家」から帰ったら必ず、来ていたものは全部洗濯するように言われていました。どんな菌が付いてくるかわからないからと・・。そんなこといわれなくても、滝の汗でぐっしょりなので、宿に帰ったらとにかく水シャワー。それから扇風機のきいた部屋でアイスでも食べて過ごしました。

女中さんが部屋にホウキをかけるために扇風機(天井に大きいのがついている)をとめるその数分間にまた汗が噴出してしまうほど、はげしく暑いところでした。

施設にはもちろん十分な数の扇風機なんてないし、仕事はまじめにやればどれも重労働でした。仕事がきつくて空気が重くなってくると、いつも修道会のシスターが賛美歌を歌いだしました。きれいな歌声でした。この人たちは何でこんなこと一生の仕事に出来るのかな?不思議でした。きつくて、地味で、終わりのない仕事ばかりでした。

マザーの施設にはろくな医療機器も揃っていない、と、イギリスの新聞に批判記事が載ったことがあるそうです。確かに、ただただ亡くなっていくのを看取る、それだけの施設だったようでした。是非はともかく・・・批判する人にはいっぺんこの仕事やってみてよね、といいたくなりました。

私は2週間で、煮詰まりました。ダメだこれは続かん!

で、午前中は「死を待つ人の家」

午後はストリートチルドレンのための

その名も「ガンジースクール」で働くことにしました。

こちらは100人ほどの子どもが、塀で囲まれた狭い敷地にぎっしり!

朝は亡くなっていく人を励まし、午後は飛び跳ねる子どもたちを追っかけ。

生と死の、ものすごいコントラスト。でもまあ両極端で、いいバランス、と思いながら通っていました。

19年前

7 コメント

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    いやはや、毎度楽しく拝見しております。
    その1を読んで、クズハさんて強いな~、と思いましたが、さすがに気が狂いそうになるほどなんですね。
    面白いと表現したら失礼になるかわかりませんが、読んでいて目が爛々と?輝いてくる自分はなんなんでしょう。
    扇風機の効いた部屋ですか・・・
    26歳の独身女性をインドまで駆り立てるものはなんだったんでしょうね。

  2. SECRET: 0
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    またもありがたいクズハさんのお話が聞けて良かったです。バングラのこと思い出してセンチになっております。結婚して子供がいなかったら、どこかの国で働いていたのかなとか・・・。
    いつかきっと☆
    クズハさんの体験記本にしてほしいぐらいです。

  3. SECRET: 0
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    中学生の頃にマザーに興味を持って、よく書籍や映像を通して施設のことはなんとなく知っているつもりだった・・・のですが、葛葉さんの日記を読んで、なんにも知らなかったんじゃないか!!とショックを受けました。シーツの話がものすごくリアルで、びっくりしました。マザーが亡くなってから、あまり報道されることもなくなったけれど、この今もまさに施設ではシスターやボランティアの方たちがたくさんの命と向き合っているんですよね。よその国のことだから・・・と無関心でいてはいけないんだなと喝を入れられたようです。ありがとうございます!また続きを楽しみにしています。

  4. SECRET: 0
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    皆さんコメントありがとうございます。なんだかとっても、読んでいただいているのですね?ちょっと、想定外で、びっくりしてます。。
    でも続き書くのが楽しみになってきたよ。こうなったら、昔の旅日記を取り出してきましょう。

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