寺田本家の奇跡

<むつみ>

 この時期の定番、ピープルツリーのチョコレートが、早々に品薄となり、それでは、と、替わりに、たくさん仕入れたエクアドルのチョコが好調です。


 店長が恐る恐る仕入れた「花粉入り」ハチのチョコも、ギフトに人気。 

http://cart1.fc2.com/cart/alweb/?ca=11


店長「わっからんモンですねえ」


かわいいけど、980円もするから、難しいと読んでいたらしい。



エクアドルのチョコは、去年、輸入もとの「スローウォーターカフェ」さんとお会いして、一晩泊まってもらって、じっくりお話も聞いたから、思い入れがあり、自信を持っておすすめ出来ます。そういう商品は、よく売れる。


 「まず商品を好きになる。すると自然に売れるようになる」これが鉄則。


 好きになると、まず、やっぱりいい場所に展示するし、お客様への説明にも気持ちが入るし、POPも丁寧に書くし、・・・、そういうふうに、売れるようになるんだと思っていました。


が!!!


 どうやら、そういう実際的なことだけじゃない、「売れる法則」が、この世にはあるらしい。「好きになる」 ことの、本当のパワー。 


 一月に、一階の「のっぽくん」スタッフ4人が、千葉の酒蔵「寺田本家」の見学ツアーに出かけたんです。


 「寺田本家」は、「五人娘」などを造っている蔵。この酒を紹介してくれた、東京の高坂勝君が、ツアーのお世話をしてくれました。


本当においしい日本酒です。他のどの日本酒とも違う。勝ちゃんの店で初めて飲んだときは「え、これ日本酒?」と確かめた。


いろいろありますが、しゅわしゅわと複雑な味のする「醍醐のしずく」が、私の大のお気に入りです。のっぽくんに置くようになってからはちょくちょく、買っていました。


その寺田本家に日帰りで出かけた4人。往復を運転した夫、さぞ疲れて帰ってくるだろうと思っていたら、なんか顔がつるつる、キラキラしている。その顔で、「いやー、楽しかった。楽しかった」


4人が4人とも「いやー、楽しかった」


 酒造りの元になる酵母の部屋は、普通は立ち入り禁止だったり、完全防備で他所から菌を持ち込まないようにしたり、「朝から納豆は食べずにおくように」といわれたり(納豆菌がまずいらしい)するそうです。


 特に恐れられるのは「火落ち菌」と呼ばれるもので、それが混じると、お酒が発酵せずに腐ってしまう「腑造」になってしまう可能性が・・・

(ちょっと聞きかじり。あとでちゃんと本を読んで訂正します)


 それが、寺田さんでは、無防備で入れるらしい。火落ち菌も、どんな菌も、オールウェルカムなんだそうです。


 菌には、いい菌も悪い菌もない。それぞれの役割があり、発酵する。そういう哲学。


 「発酵って、すごいね!菌って、すごい!」と、2週間にわたってまくしたてる夫。ずっとニコニコ顔で。ちょっとうっとおしい・・・・



 夫はその後2週間ほど、口さえ開けば「発酵するって、大事やね」「みんな、発酵しようよ」と話し続け、あー、ちょっとホントにうっとおしい。「俺らは、寺田本家の菌と友達になってきたから。」とまで言う。私はどうせ、留守番でしたから。



奇跡を見たのはその後すぐでした。寺田本家の「しぼったまんま」というお酒は、定番の「五人娘」とは違って、年間とおして2,3本しか売れなかったお酒。しゅわーっと、乳酸菌のかたまりのようなお酒です。すっぱい。私は苦手です。


 それが、スタッフみんなで、乳酸菌、乳酸菌と盛り上がり、よっしゃ2ケースとったろう、ということになったらしい。そしてそれが2週間で売れていった。そのほかのお酒も、ありえない勢いで売れ始めた。週になんども買いに来る常連さんも生まれた。しまいには、「お酒飲めないんだけど買うわ」という人まで現れた・・・・


 好きになったから売れていった。それは鉄則どおり。驚くべきは、千葉から帰って、お酒のディスプレイ場所を変えたわけでもなく、POPを新しく書いたわけでもなく、とりたてて説明をしたわけでもない段階で、羽がはえたように、酒が売れ出したこと。


 「寺田本家の菌と、ともだちになったから」



 友達になったら、スタッフの体と、ビンのなかのお酒が、呼応するのか???


 どう否定したくても、見た事実はひとつ。何もしていないのに、じゃんじゃかじゃんじゃか、お酒が売れていった。


 アルでも、スローウォーターカフェから電話があり、エクアドルの「はちのチョコ」を日本で一番売っているのはアルさんです、とのこと。


 ピープルツリーチョコのピンチのなかで、「あんたが頼り」と念を送り、スタッフみんなでエクアドルのことを話しながら店頭に出したから、よっしゃ任せとき、と、チョコが思ったのでしょうか。


 ・・・ホントに好きになるって、そんなに簡単じゃなく、たとえば現場に通って、生産者側のヒトと話したり、自分の手を動かしてみたりして初めて、腹にすとんと落ちる何がが、体に入ってくるものでしょう。


 店をやりながら、そういう時間をとることは、本当に難しい。でも、どんなに難しくても、それをやらないと、私たち、店をやっていく意味がなくなってしまうね。そんな話を、スタッフとしています。


寺田本家からは「発酵道」という本も届いています。でもこちらは、まだ念力が利いていないのか、のっぽくんに沢山ありました。私も今から読んでみます。






 


16年前

3 コメント

  1. SECRET: 0
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    久しぶりにブログを読みました。
    むつみさんの言葉に感動です(>_<)
    好きになるってすごく大切ですごく素敵なんですね。
    商品を仕入れるとき、高いものってすごく悩むけど、利益のことだけじゃなくて、気持ちが何より大事だと再確認しました。
    私もこの前のイベントで、SWCさんのパナマを高いと思いながらも、自分が欲しいから!と注文したら、意外に売れて(こんな滋賀の田舎で!)びっくりでした。
    作ってくれた生産者さんも、作られた商品も好きになって販売されているアルとのっぽくんのみんなが羨ましいです。

  2. SECRET: 0
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    しょうこちゃん元気?
    そうだよ、売れ残ったら自分で買うわ、と思って仕入れたものは、意外に残らないんだよね。
    寺田本家のお酒はへべれけに飲んでも翌日に残らない、不思議なお酒です。そっちでもどこかで買えるかな?

  3. SECRET: 0
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    滋賀県には寺田本家さんのお酒が買えるお店はないみたいです(T_T)
    私はあんまりお酒を飲まないので、お酒について興味もって動いてませんが、
    こっちでよく聞くのは…
    『七本鎗』の冨田酒造さん
    http://www.7yari.co.jp/
    『金亀』の岡村本家さん
    http://www.kin-kame.co.jp/index.html
    冨田酒造さんはお店に良い感じのグッズ(てぬぐいとか前掛けとか)置いてます。
    近隣には滋賀県名物!?サラダパンの「つるや」さんもあります。
    岡村本家さんは蔵を使って、自力整体の教室とかもされてます。
    蔵の中はすごく広いです。
    暗くて静かで暖かい空間です。
    岡村本家さんでの
    「本格酒造り体験-近江杜氏-」
    はNPO法人五環生活の友達がやってます。
    おもしろそう。
    菌と友達になれるかな?

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