<クズハ>
井村さんのお話つづきです。
前回は福田さんが「地産地消」の意味を深めてくださったので、地産地消以外のテーマでお願いします、と、私が前日にメールでお願いしたことが、井村さんをちょっと悩ませていたようです。
フェアトレードに関心のある人たち対象だから・・・と、WTO、FTA,ETA体制の中での農業とは!という、おっきなテーマを立ててくださいました・・・・
前回の、福田さん新婚おめでた祝賀ほんわかムードから、一気に井村さんの数字の海に放り込まれた参加者さんたち。これがド迫力で。メモは数字でいっぱいに。
国内で、無農薬小麦を作っている農家さんは5件。
井村さんが挑戦したいと相談すると、誰もがクレイジーだと忠告したとか。クレイジーと言われれば言われるほど燃えるタイプ、の井村さんは、それでも栽培に挑戦して、いまは一番採れる時で200トンを栽培しています。
200トンすごいなー、と思うでしょう?でも、日本の小麦の生産量は全部で700トン。そのうち有機のものは300トン。そのうちの200トンが井村小麦。
ちなみに国産大豆は有機600トンのうち、井村大豆が120トン。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おおおお、ぉ?
希少価値が十分にある有機小麦・大豆に、なぜ他の農家さんが手を出さないのか、これは日本の農業の構造上の問題が大きいようです。
農家さんが大豆を30キロ作ると、手取りが7500円くらいになります。これには交付金が含まれています。(米から大豆に転作したらいくら・・・というように、交付金がつく)
交付金と関係なく、オーガニックの小麦をつくろう!と思い立った農家さんが、コストを計算していくと、30キロ6500円くらいは必要な計算になる。でも、豆腐屋さんは、交付金が上乗せされる前の値段(3000円~5000円)で大豆を買えるので、6500円の大豆は誰も買わない。
値段の次の問題は、量。金沢の製粉やさんに相談すると、粉にするためには最小でも200トンもってこい、といわれる。昔はどこの町にも小さな粉やさんがあったが、いまはどこも超大型化していて、200トンですらあっというまに粉になってしまう。10トンとかだったら、どこにいったかわからないくらいの量、ということになってしまう。
近場では挽いてくれるところが見つからず、しかたなく、岩手まで送って挽いてもらうことに。
輸送のコストや、袋代(15円だそうです)など経費が積みあがっていって、売値を計算してみたら、500gの袋が550円になってしまった。いまどき、スーパーではキロ98円の特売があるほどなので、これでは売れようがない。
ここから先が井村さんのすごいところなのですが、もう値段を計算するのはやめにして、とにかく国産の小麦というものを世の中に出そう、いくらだったら買ってもらえるか、を逆に考えて値段をつけた、と。。。
今のっぽくんでは378円で売られています。
いま、日本が「自由貿易」の対象相手として交渉している、特にお米や小麦関係の国といえばオーストラリアですが、オーストラリアの小麦農家の規模は4000ヘクタール。日本の平均的な農家さんの規模は1・5ヘクタール。もし農作物を関税なしで輸入することになれば、500倍の開きのある規模の相手と競争していくことになります。
大規模にすればコストが下がる。それはそうなんですけど、農業に関しては、「大規模化だけでは絶対にダメなんです!!!」と机をたたいて主張したい理由が山ほどあります。
それに、オーストラリアでは去年の大旱魃で、例年の1割しか収穫がない地域もあり、自殺に追い込まれた農家さんがたくさんいらっしゃると聞きます。イタリアでも小麦の収量は激減して、数パーセントという話。
このままいくとどうなるのかーーー??
穀物の値段は急上昇中。食糧援助に頼っている人たちはもちろん一番最初に見捨てられています。そんな中で、補助金がたくさんついた先進国の安い農産物が、南の国の農村をつぶしていっている現実。そして日本の農村も・・・
話が大きすぎて、ブルドーザーに踏みつぶされるアリの気分になってきますよ。
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井村さんのお話の合間に、嵐が焼いた「井村小麦パン」と、おなじみ小紺さんが焼いてくださったクッキー、ケーキをいただきました。どれも、井村さんの小麦の味がしっかり出て、とても甘くておいしかった。
こんな「クレイジー」なダンナさんは、奥さんにとってはいかがですか?と、会場からの質問が。奥さんは「言い出したらやる人なので・・・・形にしていく人なので・・・・」とポツポツと。そして「信じています」のひと言に、一同、首をふり、うなずき、ため息、思わず沸き起こる拍手。(私は涙)
いやいや~~~。
こんなお話を聞いた翌日は、店の中もやっぱり空気が違います。私らもがんばろうね!と思います。井村さん、清乃さん、ゆりのちゃんにこたろうくんも、どうもありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。